「孤闘 立花宗茂」の感想
- 2019.01.28
- 歴史小説感想
2010(平成22)年、中山義秀文学賞を受賞した作品。
余談ですが、作者の上田 秀人氏は現在も大阪府八尾市で歯科医をされており、ケアマネジャーの資格も持っていらっしゃる異色の作家。
「孤闘 立花宗茂」は戦国時代末期、九州の大友氏の重臣で、名将として名高い高橋紹運の長男として生まれるも、その後、同じ大友氏の重臣・戸次道雪に養子として引き取られ、大友一族の立花氏を継いだ立花宗茂の生涯を描いた作品。
宗茂は豊臣秀吉に見いだされ、大友から独立。
一個の大名となりますが、関ヶ原の戦いで、交流もあった徳川家康の東軍と戦い、西軍が敗れたため戦後改易。
しかし、再び東北の棚倉藩(現在の福島県)で再び大名に返り咲き、大坂の陣の後には再び筑後柳川で10万石を越し、九州へ返り咲いた武将です。
そんな一見すると、サクセスストーリーを歩んできた宗茂ですが実は、小説の中では妻である誾千代とは一度も、夫婦の関係を持たず、ほとんどを他人として過ごさざるを得なかったとあります。
事実、宗茂には実子がありませんでした。
高橋の家に生まれながら、他家である戸次(べっき)氏に入ったため、譜代の家臣もおらず、若い頃より常に孤独を感じ生きた武将だったとされます。
本書ではそんな、宗茂の心の葛藤、陰の部分にスポットを当てた作品。
それも鋭く深く、心の闇をえぐるように描いた作品です。
ただ読んで暗い気持ちになる作品でなく、重厚な作品なのですがスピード感もあり、感情移入も出来て読みやすい作品でないかと思います。
中央と離れた九州の戦国末期の事情も分かって、とても面白い一冊です。
著者 | 上田 秀人 |
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出版社 | 中公文庫 |
おススメ度:
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